AWS 入門ブログリレー 2024 〜Amazon Q Business編〜
こんにちは。AWS事業本部コンサルティング部に所属している森田です。
当エントリは弊社 AWS 事業本部による『AWS 入門ブログリレー 2024』の 54日目のエントリです。
このブログリレーの企画は、普段 AWS サービスについて最新のネタ・深い/細かいテーマを主に書き連ねてきたメンバーの手によって、 今一度初心に返って、基本的な部分を見つめ直してみよう、解説してみようというコンセプトが含まれています。
AWS をこれから学ぼう!という方にとっては文字通りの入門記事として、またすでに AWS を活用されている方にとっても AWS サービスの再発見や 2024 年のサービスアップデートのキャッチアップの場となればと考えておりますので、ぜひ最後までお付合い頂ければ幸いです。
本記事のテーマは『Amazon Q Business』です。
Amazon Q Business の説明に入る前に、まずは Amazon Q のおさらいをしていきましょう。
Amazon Q とは
Amazon Qは、ビジネス・開発といった様々なユースケースにあった生成 AI を素早く利用できるサービスです。
Amazon Q の種類
Amazon Qの中でも、ユースケースごとでサービス名が分かれています。
- Amazon Q Business
- Amazon Q Developer
本ブログでは、触れない「Amazon Q Developer」ですが、開発者向けの生成AIサービスとなっております。
旧CodeWhisperer や Amazon Q Code Transformation は Amazon Q Developer に含まれます。
では、『Amazon Q Business』について詳しくみていきます。
Amazon Q Business とは
Amazon Q Business は、生成 AI を利用する際に必要な認証認可・LLM・RAG・データソース・WEBインターフェースなどをまるっと準備してくれるサービスとなります。
2024/05/28時点では、Amazon Q Business は、英語のみサポートされており、日本語ドキュメントをデータソースとすることやWEBインターフェース上での日本語での回答はできません。
Amazon Q Business の全体像
具体的には、Amazon Q Businessでは、下図ようなリソースを構築します。
では、Amazon Q Business の各リソースや機能について説明していきます。
データソースコネクタ
データソースから情報を取得するコンポーネントを「コネクタ」と呼び、40以上のコネクタが用意されています。
Supported connectors - Amazon Q Business
また、ユーザーストア機能を利用することで、データソースから情報を取得するタイミングで、各ユーザと情報のマッピングを行い、アクセスできる情報を絞ることも可能となります。
インデックス
インデックスとは、データソースの情報を保存する場所のことを指します。
インデックスには、データソースコネクタを用いて取得したデータをRetrieverが扱いやすい形式(ベクトル化等)に変換して保存されています。
インデックスについては、Starter Index と Enterprise Index が用意されており、それぞれでデプロイされるアベイラビリティーゾーン の数が違います。
また、インデックスは「ユニット」と呼ばれる概念があり、インデックスで扱うことができるデータ量を表します。
- 1 ユニット
- 100 時間分のコネクタの使用
- 20,000 件のドキュメントまたは 200 MB の抽出されたテキスト (いずれか早く達した方)
このユニットをインデックスに割り当てますが、割り当て可能な最大値がインデックスタイプごとに異なります。
- Starter Index
- 1 ~ 5ユニット
- Enterprise Index
- 1 ~ 50ユニット
Retriever
Retrieverでは、入力された質問やクエリに応じて、インデックスから目的のデータを取得します。
Amazon Q Businessでは、Native Retriever と Amazon Kendra の2つが用意されています。
Native Retriever は設定項目が少ない反面、細かいカスマイズが難しいです。(例えば、日本語についてはインデックス化できません)
LLM
Amazon Q Businessでは、利用するLLMについては意識する必要はありません。
なお、ドキュメント上では、Amazon Qは、Amazon Bedrock で構築されているとの記載があるため、LLMについてもBedrockで展開されていると考えると良さそうです。
ID管理
ID管理については、プレビュー版では、外部 ID プロバイダーを直接利用できていましたが、一般利用開始時より IAM Identity Center のみのサポートとなっています。
従来の ID管理を使用している既存の Amazon Q アプリケーションは2024 年 7 月 31 日までに、IAM Identity Center を使用するよう移行する必要があるので、ご注意ください。
IAM Identity Centerで統合を行えば、IAM Identity Center経由で外部 ID プロバイダーを利用することも可能です。
なお、IAM Identity Center については、Amazon Q Businessで自動で作成はされません。(コンソール上からであれば、ワンクリックで作成可能です。)
Webインターフェース
エンドユーザがアクセスするためのWebインターフェースが標準で用意されています。 また、スタート画面の文言の変更等の簡単なカスタマイズも可能です。
また、会話履歴を 30 日間保存し、会話終了後も会話のコンテキストを維持することができます。
30 日間の期間内であれば、中断したところから会話を再開できます。
Amazon Q Apps
Amazon Q Appsは、2024/05/28時点ではプレビュー版の機能となっています。
Amazon Q Apps はコーディングなしで、欲しいアプリを自然言語で説明するだけ独自のアプリケーションを作成することが可能です。
機能としては、PartyRock と近いですが、Amazon Q Appsでは、インデックス化した情報も扱うことができるため、よりビジネスの観点で活用しやくなっています。
また、作成したアプリケーションは、チーム内で共有することもできます。
プラグイン
プラグインでは、直接アプリケーションから処理の実行が可能となります。
組み込みプラグインとして、Jira、Salesforce、ServiceNow、Zendesk などがサポートされており、
例えば、ユーザが Jira チケットの作成などをアプリケーション上で入力することで裏側で処理を実行して、実際にJira チケット作成を完了させることができます。
組み込みプラグインの他にもカスタムプラグインとして、OpenAPI を実行することもできるので、非常に便利な機能となっています。
ガードレール
ガードレールとして、グローバルコントロールとトピックレベルのコントロールがあります。
グローバルコントロール
グローバルコントロールでは、アプリケーション利用時の以下の制御が可能となります。
- 応答設定
- エンドユーザーが LLM に直接クエリを送信できるようにする
- Amazon Q が LLM ナレッジにフォールバックできるようにする
- ブロックされたフレーズ
- アプリケーションに対してブロックされるフレーズを定義
- 機能制御
- ファイルアップロード機能
- Amazon Q Apps
トピックレベルのコントロール
トピックレベルのコントロールでは、事前に想定される質問に対しての回答の制御が可能となります。
以下のように想定されるメッセージのサンプルとそのメッセージを受けた時の振る舞いを定義することができます。
なお、このコントロールについては、最大2つまでの指定となります。
利用可能なリージョン
2024/05/28時点では、以下2つのリージョンのみ対応となります。
- us-east-1
- us-west-2
Service quotas for Amazon Q - Amazon Q Business
料金体系
インデックスと利用ユーザ数に対して料金が発生します。
インデックス
タイプ | 1 ユニットあたりの料金 |
---|---|
Starter Index | 0.140 USD/時間 |
Enterprise Index | 0.264 USD/時間 |
利用ユーザ数
ユーザのタイプとして、LiteとProがあり、それぞれで利用できる機能が違います。
Amazon Q Business Lite | Amazon Q Business Pro | |
---|---|---|
IAM Identity Centerとの連携 | ⚪︎ | ⚪︎ |
Webインターフェースでの利用 | ⚪︎ | ⚪︎ |
Amazon Q Apps の利用 | × | ⚪︎ |
カスタムプラグインによる機能の拡張 | × | ⚪︎ |
Amazon Q in QuickSight (Reader Pro) | × | ⚪︎ |
利用料金 | 3 USD/ユーザー/月 | 20 USD/ユーザー/月 |
上記は、2024/05/28時点の料金ですので、詳しくは以下をご参照ください。
おわりに
Amazon Q Business は、生成AIを素早く活用する際には、非常に便利なサービスとなっています。
また、基本的には、コンソール上で数クリックだけで、Webアプリケーションを構築できるため、気になったら試してみると良いと思います!
スキルビルダーで構築方法のコンテンツもありますので、ぜひチェックしてみてください。
以上、『AWS 入門ブログリレー 2024』の54日目のエントリ『Amazon Q Business』編でした。
次回は弊社べこみんによる『Amazon GuardDuty』の予定です!